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幻(げん)の世界へ
誘う装幀

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  • 幻(げん)の世界へ 誘う装幀

2019年3月に発売となった『幻償』。
その装幀は、タイトルのごとく、
夢の中の幻を見ているかのような
奇妙な浮遊感がある。
実体の掴めないむずがゆさは、
主人公・雨鏡幻の精神世界にも通ずる。
この記事では、装幀を通して
『幻償』の世界を紐解いてみたい。

カバー

灰色の太陽と
ラメ感が夢想的

燃え尽きた太陽を再構築しようと包み込む白い光と、
それを容赦なく一刀両断する黒い光。
主人公・雨鏡幻の精神世界を表しているようだ。
凍りついたそれは、何もない空間にぽっかり浮かんでいる。

割れた題字の赤い部分には透明の箔があり、光の加減で表情が変わる。
微々たる変化だが、『幻償』の不安定さを読者に印象づける。

登場人物たちの過酷な運命や激動の日々とは裏腹に、
表面上は静けさを装う。
決して、乖離しているわけではない。
むしろ、この小説は、この表面上の静けさを保たなければならないのだ。

 

 

表紙

心を覗き込むような
艶やかな黒

表紙をめくると、鏡のように艶やかな漆黒が現れ、
一瞬、あなたの顔を映すだろう。
それは、紛れもなくあなた自身の顔だ。
しかし、物語を読み終えた時、再びこの漆黒を通して自身を見つめてみてほしい。
果たしてそれは、自分の知っている自分自身の姿だろうか。

 

 

装幀データ

カバー

プロセスカラー印刷。特色は不使用。
全体に彩度が低く、ぼんやりした印象になりがちだが、
部分的に透明の箔を乗せて引き締める。

そでには、登場人物の台詞を抜粋している。
『幻償』の世界を構築する印象的な台詞を選んだ。

 

 

表紙/裏表紙

一見、スミ1色だが、実際はプロセスカラー印刷である。
表面が強光沢のキャスト紙で、ブラックを選択。
裏面は白い上質系の紙質で、そこに印刷している。

 

 

本文

文字は、大きすぎず小さすぎない12級。
窮屈にならないよう、柱とノンブルは上部にまとめた。
長い時間の経過を表す時や、キャラクターの視点が変わる際は、
改ページのち五行取りで空白をつけている。

 

 

装幀:齊藤木 一紗
印刷・製本:株式会社明光社 STARBOOKS 様